ちょうど1年前の2018年12月7日の記事なのですが、岩手県盛岡市の「みちのくあかね会」にお願いしてホームスパンのジャケットを生地からお願いして作るということを始めていました。
本当は途中経過も記事にしていければと思っていたのですけれど、子どもが産まれたりとバタバタしているうちにいつの間にか1年が経ってしまいまして。。
約1年ぶりに「みちのくあかね会」さんへ。
今年の山場で一番忙しかった11月下旬にひと息ついたタイミングで「そろそろ生地が出来上がります!」という連絡が入ったので、久しぶりに本日工房に足を運んで生地の確認とテーラーさんへの引き継ぎをしてきました。
担当者さんも今年1年なんだかんだでお忙しかったようで「本当なら途中途中も見ていただければ良かったのですがすみません」とおっしゃって頂いたのですけれど、いやいや寧ろこちらがお任せしきりですみません!!という感じ。
ホームスパンは生地のイメージに合わせた調合で数種類の糸を織っていくのですが、そもそもその糸自体を手作業で染色するところから始まるので気の長い作業です。また工房内でも予約分を順番に作っていくので、私の場合には発注してから1年経ってやっと生地が出来上がったというわけですね。
昨年の段階では今年の秋ころには着られるかなとざっくり話していたのですけれど、ギリギリ今年中に仕立て上がるかなという感じです。気温などによっても乾き方だとか様々な条件が変わってくるので、手作業で1から作り出すホームスパンは数ヶ月の前後は普通にあるのかなと。長く着られるものですので自然の呼吸に合わせてゆっくり待つのも良いものです。
午後の約束の時間に工房におじゃました時にはちょうど仕上がった反物を巻いているところでした。予想される必要分よりもかなり長めに作ってあり、生地を傷めないように専用の木軸に巻いてから軸を引き抜く流れ。
ジャケットとして必要な部分が確定した時点でその長さ分を私が買い取って工房にお支払いして、その後の仕立て代はテーラーさんにお支払いする形になります。今日はテーラーさん同席のもと、生地の確認とジャケットの仕立てについて相談する段階でした。
ジャケットの仕立て方はホームスパンの特性を考えると迷う所。
テーラーさんとの相談で大まかな形を決めていったのですけれど、これが結構迷うんですよね。
そもそもホームスパンの衣服ってちゃんと手入れをすれば50年とか着続けることができるもので、親から子へ受け継がれているようなものも存在するんです。
そうすると「数年レベルの流行りに合わせたスタイル」よりも「数十年レベルで長年着ても飽きないベーシックなスタイル」の方が好まれるというか、「ホームスパンというものの価値に合致する」ようなんですよ。
確かに数十年という長さで考えると、流行り廃りはあったとしてもベーシックなものであれば古さをそれほど感じない可能性が高いです。例えばバブル期のジャケットは肩パッドがガッツリ入ったものでしたが、それを今着ると笑われますよね。もしかしたら流行が一回りしてまた流行る時期がくるかもしれませんが、それよりは流行りに関係なく着られる方が良いわけで。
ただその一方でベーシックなものって歳を重ねるほど似合ってくるものだったりするので、若い人が着るにはちょっと野暮ったく感じることもあるわけです。
ホームスパンの既存のジャケットを工房で見せていただいた時にも、小柄な私が着るとどうしても野暮ったいというかおっさん臭く見えるというか。「それお父さんからもらったんですか」みたいになってしまうという。。
あと20歳くらい歳を取ればちょうど似合ってくるのでしょうけれど、30代半ばでホームスパンのジャケットを生地から仕立てるというのが工房ではあまり前例がないらしく、デザイン的にも上手く歳相応に着られるものにする工夫が必要になってきます。
そこで今回の生地についてはまず「できるだけ薄めの生地になる織り方を選ぶ」という所から始めています。ホームスパンのジャケットって結構厚めの生地のイメージがあって、それが若めの年齢が着るにはちょっと野暮ったさにつながりやすいのかなと感じたからです。
またホームスパンの織り方はいくつか選べるのですが、その中でも一般的な「平織」を選びました。英国のツイードが「斜文織」であることに対して岩手のホームスパンは「平織」と言われることもありますが、生地からお願いする場合には織り方も好きなものを選ぶことができます。
その上で生地自体には柄・模様がパターンとして見えないようにしています。ホームスパンの特徴・魅力としては斜文織などで生地に一定のパターンを浮かび上がらせるということができるのですが、今回は敢えて遠目だと1色のベタ塗りに近いように見えるようにしていただきました。
ただし(冒頭の画像を再掲載しますが)近くでよくよく見るとかなりの色数を使っていることがわかります。1色1色が別々に染められた糸で、それを撚り合わせることで遠目には一定の色に見えるように表現して、更に経糸(タテ糸)と緯糸(ヨコ糸)を組み合わせることで生地全体の色合いにしていくということですね。その工房独自の「配合」と「表現」がホームスパンの肝でもあるわけです。
この生地を素材として、あとはボタンの数だとか襟の形だとかポケットのスタイルだとかジャケットのデザインを一つ一つ決めていくことで全体像がやっと浮かび上がってくるんですね。
これまでも仕事用のスーツを仕立てたことはありますが、細かいデザインについては正直なところ詳しいというわけではないので、今回は工房の担当者さんとテーラーさんに色々と教えていただきながら仮決めしました。
1週間後に仮縫い状態のものが出来上がるので、それを見て最終的なデザインを決める予定です。基本的な部分は1度決めてしまうと後戻りできないのですけれど、細かい部分は仮縫い後でも選べるように布に余裕を持って仕立ててくれるということで。
前述したように数十年単位で着られるというホームスパンの特徴を考えるとベーシックなものにした方が良いのかもしれませんが、自分の年齢で着るということの意味を考えると少しカジュアルな方向に寄せたいというのが今の気持ちです。
一生で1着だけとは考えていないので、数年は着られるというイメージで印象が若めのものにする方が良いのかなと考えています。生地を薄めにした理由のひとつには1シーズンの中でもできるだけ長く着られるようにしたいということもあるので、冬が長い東北とは言え秋〜春先にかけて着続けられるようにできれば最高ですよね。
まとめ
約1年をかけて出来上がったホームスパンの生地。ここ1ヶ月でジャケットに仕立てて頂いて、2020年の始めから着始められそうなのでとても楽しみです。
1から仕立てなくてもすぐに購入できる既存製品のラインアップもありますので、マフラーやひざ掛けなど気に入った生地があればジャケットに合わせて手に入れたいなとも考えています。
そういえば仕立てた後の端切れももらえるのかどうか聞くのを忘れていました。工房に対しては反物を長さで買う形なので、端切れも引き取れそうですよね。小さい額に入れても可愛いかも。後で確認してみます。
参考)みちのくあかね会HP:https://www.michinoku-akanekai.com/
ちなみに最近NHKの「趣味どきっ!」でも「みちのくあかね会」さんが紹介されまして、ムック本にも掲載されています。番組も見まして取材の様子なども今日の打ち合わせ時にお聞きしましたが、取材も丁寧だったということで編集もしっかり要点を押さえてわかりやすく紹介されていましたよ。今後また再放送があれば録画しておこうと思います。ではまた。
※2019.12.16追記:仮縫いの確認・調整に行ってきました。