働き方

技術とコスパは細部に宿る

手彫りと鋳造

岩手県の伝統工芸品「岩谷堂箪笥」。これに使われている金具には職人による「手打ち彫り」と「南部鉄器」の技術を使って鋳造したものの2種類があります。

高い技術で一つ一つの模様を手彫していく手打ち彫りは技術も時間も必要で高価なものになりますが、その精密な技術は一見の価値ありです。

この箪笥金具は装飾的な意味合いが強いわけですから、モノとしての箪笥の機能を考えればもっとシンプルで低コストなパーツで作っても良いという見方もあるかもしれません。特に現代は豪華で複雑なものよりもシンプルなものが好まれる傾向があります。デザイン業界もそうですよね。iPhoneのアイコン等もすっかりフラットデザインに慣れてしまった感がありますし。

ただ実際に手打ち彫りの金具を見ると、細部に宿る技術への探求が生み出すものはやはり熱いなと感じます。職人が人生をかけてひと打ちひと打ちして彫りあげられたものの価値は、唯一無二の芸術品としての風格があります。それを普段使いの箪笥として使うのがまた贅沢なのでしょう。

これがコストパフォーマンスについての考え方につながります。人の人生を豊かにするものって何でしょうか。という話です。

コスパと価値基準

極限まで機能性のみに特化したデザインを追求すれば、それもまた芸術なのかもしれません。ただ、それがコスト由来の意匠であったとすると少し寂しいなと感じます。

大量生産、大量消費の時代はとっくに終わったと言われて久しいですが、見渡せば薄利多売の大量生産品と高付加価値追求型の限定生産品への二極化傾向ということなのかもしれません。形は変われど生産も消費も大量に続けられている場面はあるものです。

情報領域でもそうですよね。SNSのようなインスタントな双方向コミュニケーションが生産消費され続ける一方で、最近はクローズドの有料オンラインサロンも広がってきています。

改めてコストパフォーマンスについて考えてみると、単純に「絶対的な値段が安いから良いよね」という考え方と、「得られる価値に対して価格が相対的に安いから良いよね」という考え方が混在しているようで。

前者は価値の基準を0と捉えているので、価格も0に近い方が良い。後者は価値の基準を査定し変動するので、価格が100でも価値が1000なら圧倒的にコスパが良いとなるわけです。

ものづくりの行方

人生を豊かにする価値観は後者だと感じます。広く「ものづくり」の立場に立ったとき、これからの時代は改めて価値追求が優位的に認められ選ばれる流れになっていくと考えています。

ここ最近日本でも聞くようになった「倫理消費(エシカル消費)」という考え方も同じですね。倫理的な価値が認められるものが消費者に選ばれるという考え方です。

どんな仕事でもこの考え方は当てはめられると感じていて、手打ち彫りのような技術を持って、価値を最大化するような働き方を目指したいものです。

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