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【書評】漫画の神様の画力と筆致に触れる『手塚治虫 ヴィンテージ・アートワークス<漫画編>』(立東舎)

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今の時代はインターネット上の様々なコンテンツを通してプロの仕事の様子を知ることができます。特に漫画やイラストなど、これまで一般には公開されることのなかった細かな部分がどのように描かれていくのかを動画コンテンツで見ることができるのは素晴らしいことだと感じています。

作品や本として私たちの手元に届くのは「完成品」ですから、その技術や工程に触れることでさらに深く作者を知ることができたり、また自分自身でも何かしら描く際の学びにもつながっていきますよね。

私は漫画の神様「手塚治虫」先生の作品が小さい頃から好きだったのですが(幼稚園の自由帳にレオとアトムを描いていた記憶があります)、この作品群がどのように一人の漫画家の頭の中から生み出されていくのかに非常に興味がありました。

手塚治虫先生は1928年11月3日生まれで、1989年2月9日に亡くなられています。私が1983年生まれですから、物心ついたころにはまだご存命だったんですよね。つい先々月の2018年11月3日が生誕90周年で様々なイベントや動画の無料配信企画などが実施されていたところです。

さて、今回紹介するのは『手塚治虫 ヴィンテージ・アートワークス<漫画編>』。

本書は、手塚治虫が残したアイディアスケッチや単行本化の際に割愛された絵物語のカットなど、これまで単行本未収録だった作品を中心に構成するヴィジュアル・ブック。漫画編では、活動初期から晩年まで、広範な時代のアイディアスケッチやカットをふんだんに掲載、手塚の生き生きとした筆致が楽しめます。普段、読者が目にする機会のないネームや単行未収録の漫画作品まで、幻の手塚作品のオンパレード。手塚治虫の創作の源泉に迫る貴重な作品集になっています。

Amazon商品ページの解説より引用

Amazonだと中身がいくつか画像紹介されているのでそちらも参考としていただきつつ、ここでは(中身を写すのは著作権的に良くないでしょうから)表紙の一部を拡大して解説します。

ちなみに目次としては以下の通り。全224頁と結構な分量です。

p003〜■オリジナルキャラクター
p053〜■羽と星くず(挿絵)
p079〜■未使用・下書き原稿
p149〜■単行本未収録作品・再録/広告
p169〜■予告イラスト原画
p205〜■エクストラ
p222〜■解説:濱田高志(注:高は”はしごだか”)
p223〜■索引

■オリジナルキャラクター

この章では手塚漫画に登場するオリジナルキャラクターのスケッチやカラー原画が特集されています。

【書評】漫画の神様の画力と筆致に触れる『手塚治虫 ヴィンテージ・アートワークス<漫画編>』(立東舎)

表紙の上部に写っている「ユニコ」の他に、鉄腕アトム、魔神ガロン、ヒゲオヤジ、レオ等々、有名キャラクターを中心とした鉛筆スケッチは手塚先生がどのようにキャラクターを考えて形を吟味していったのかが見て取れる貴重な資料です。

中には「三つ目がとおる」の主人公、写楽保介のスケッチもあるのですが、髪が生えているバージョンであったり、小さなフランケンシュタインのようなバージョンが構想されていたことがわかります。

この章の後半は各キャラクターのバストアップのカラーイラストが14頁×各4カット並んでいて見ごたえがあります。

■羽と星くず(挿絵)

単行本収録の際に挿絵の殆どがカットされたという絵物語「羽と星くず」。宇宙から持ち帰られた羽根状の物体を手にした定男少年の物語ですが、この章では現存する同作の原画が全て掲載されています。

参考まで、「羽と星くず」が読めるのは以下の単行本。「ハトよ天まで」

    
  

    
  

■未使用・下書き原稿

ファン垂涎の資料と言っても良いのがこの章。使用されなかったのには理由があるのでしょうけれど、「ボツ原稿」というものを見てみたいのもファン心理です。

【書評】漫画の神様の画力と筆致に触れる『手塚治虫 ヴィンテージ・アートワークス<漫画編>』(立東舎)

手書きのスケッチレベルのものからペン入れしているもの、中には未使用ネーム(『ダスト18』 1973年:少年サンデー)や『ブラックジャック』の未使用原稿まで掲載されています。あとは上の表紙写真の下部に写っている『メトロポリス』の単行本表紙未使用原稿(1949年)など。

描きかけの原稿からは制作過程も見て取れるので非常に勉強になる内容です。

■単行本未収録作品・再録/広告

幻の連載漫画『ターザンの王城』(1948年)をはじめとして、この本の発売まで単行本未収録であった漫画・イラスト・広告用ラフスケッチを掲載した章です。特に広告用スケッチには「SONY 8ミリビデオ」(1986年)など興味深いものも。

■予告イラスト原画

読み切り作品や連載漫画の予告用に描かれたイラストを特集した章。

今の漫画雑誌だと新連載の予告ってタイトル・コピー・イラスト中心で細かい説明はしないと思うのですが、ここで掲載されているものを見ると説明文章がしっかりと付いていたり、見開きでコマ割りされている予告漫画とも言うべき体裁になっていたりと面白いです。

特に個人的に惹かれたのは『走れ! クロノス』(1975年)。これ私が小学生か中学生かのときに初めて「手塚漫画の初版本を手に入れた」漫画なんです。あまりメジャーな作品ではないと思いますが今でも大切な宝物です。その原稿が見られるだけで感慨深い。

■エクストラ

『会津在住の手塚ファンの方々から提供された色紙や秘蔵原画を大公開』とされている章。

【書評】漫画の神様の画力と筆致に触れる『手塚治虫 ヴィンテージ・アートワークス<漫画編>』(立東舎)

非常に丁寧に書かれた色紙や、上の表紙写真の中段左側に写っている『リボンの騎士』の原画、さらには『ジャングル大帝』の原画まで掲載されています。特に『リボンの騎士』はカラー原画で紙の汚れなどまでそのまま掲載されていて素晴らしい。

まとめ

このような資料本ってただ眺めているだけで飽きないんですよね。線の運び一本一本を見ながら「こういう風に描いていったのかなぁ」と想像するだけで楽しいもので。表紙の右下に写っている鉄腕アトムのイラスト1枚を見るだけでも「頭書くときに丸く書いてから尖っている髪を書いたのか」という発見があったり。

【書評】漫画の神様の画力と筆致に触れる『手塚治虫 ヴィンテージ・アートワークス<漫画編>』(立東舎)

自分でアトム描くときって小さい頃からずっと髪の輪郭線に沿って一気に描いてたんですよ。よく考えると頭の位置を決めてから髪を追加する方が良いというのは納得なのですが、手塚先生がこのように描いていたのは目からウロコでした。作品として手元に来るときにはベタ塗りされているからわからないんですよね。

ということで『手塚治虫 ヴィンテージ・アートワークス<漫画編>』おすすめです。ちなみに『手塚治虫 ヴィンテージ・アートワークス<アニメ編>』もあります。こちらは絵コンテや原画などアニメーション作品の資料集です。

    
  

    
  

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