書評

プランクトン好きによるプランクトン好きのためのプランクトンだけに情熱が注がれた『プランクトンハンドブック 淡水編』はニッチだがたまらなくかわいい。

Amazonで予約していたプランクトンハンドブックが届きました!

TwitterのTLで『プランクトンハンドブック』という個人的にグッとくる本の紹介が流れてきたので速攻でAmazonで予約しまして、本日(2018.10.11)届きました。

著者は「中山剛」博士「山口晴代」博士。いずれも筑波大学の理学博士でいらっしゃるようです。で、この本を本当は詳しく中身紹介したいのですが著作権の関係もあると思うので、差し支えなさそうな一部のテキストなど引用しながらお伝えしようと思います。

というのも、この「プランクトンハンドブック」って非常にニッチな分野だと思うんですよ。世間一般的には。でも刺さる人にはめちゃくちゃ深く刺さるはずです。かく言う私もそうなのです。小学校のときに初めて顕微鏡でミクロの世界を覗いたあの衝撃。プランクトンのデザインってとんでもなくシンプルで洗練されていて、しかも「生きてるのこれ?!」という驚きに満ちた世界だったわけです。

その「プランクトン約300属を見分けられるハンドブック」の凄さわかりますか?! ワクワクがとまらないんですよ。多分この著者のお二人も同じような原体験があるのではないかなぁと勝手に想像してしまうのです。

ここまで読んでも「?」という方のためにさらに魅力をお伝えします。

プランクトンハンドブックの魅力 1【表紙がかわいい。】

表紙のタイトルまわりを拡大してみましょう。

ほら、プランクトンがいっぱい。

 

かわいいでしょう?

 

よくわかりませんか。もっと拡大してみましょう。

 

ほら、かわいい!

 

もうね、そうなんです。こういうことなんですよ。

プランクトン好きには、

↑このプランクトンたちが…

 

こう見えるんです!

 

ほら、かわいい!

 

何度でも見比べてみてください。プランクトン萌えというのはこういうことなんです。シンプルでときに幾何学的なデザインにも魅了されることに加えて、それがもう可愛く見えてくるんです。だからこそこの著者のお二人がガチであることが伝わってくるんです。この表紙から。

プランクトンハンドブックの魅力 2【あとがきの思い】

表紙を楽しんだら、あとがきを読んでください。まえがき部分には「この本の特徴と使い方」というページもありますが、まずは「あとがき」です。ここに著者の素直な思いが込められています。抜粋して引用します。

ひょっとしたら、このハンドブックを探しても「名前がわからないプランクトン」が見つかってくるかもしれません。(〜中略〜)この世界には、まだ名前のついていないプランクトンがたくさんいると言われており、そんな“名無し”のプランクトンはみなさんに発見してもらえる日を待っていることでしょう。

最初のツイートにもありましたが、このプランクトンハンドブックは学校教育の現場でも役立つのではと著者は言っています。前述の私の原体験としても、初めて顕微鏡を覗いたときの感動がもしかしたらそのまま研究者への道につながることもあるのだろうなと感じます。そしてこのプランクトンハンドブックをきっかけとして興味を持った子どもたちが、いつか未知の新しいプランクトンを発見してくれればという研究者としての夢が込められているのです。

さらにあとがきの最後に、発行所である文一総合出版の担当者への言葉が以下のように続きます。

この“マニアックな”プランクトンハンドブックを企画してくださり、とても感謝しています。

著者自身が「マニアックな」とカッコつきで表現しているあたり、微笑ましいというか人柄がわかるというか、何か出版に至るまでのどこかで「マニアック過ぎね?」みたいなやり取りがあったことをうかがわせます。

いずれこの「あとがき」を読めばこの本のニュアンスと姿勢を感じられるように思うのです。

プランクトンハンドブックの魅力 3【著者紹介がガチ】

そしてあとがきの次のページにある「著者紹介」を読んでください。このプロフィールは公開用で引用しても大丈夫だと思いますので、全文引用させていただきます。

著者紹介って所属とかで読むところもなさそうですが、個人的に気になる部分を赤字にします。まずは中山博士。

中山 剛(なかやま・たけし)

1968年、静岡県生まれ。博士(理学、筑波大学)。
筑波大学生命環境系准教授。藻類などの原生生物の多様性について研究している。
イラスト作画も担当
お気に入りは真正眼点眼藻のなんとも言えない色合い。

 

イラスト作画?!

真正眼点藻のなんとも言えない色合い?!

 

この「イラスト作画」ってのがもしかしたら表紙のあの可愛いイラストなのかなと一瞬思いましたが、本文中にもっと図解的なイラストもありまして、どちらのことを言っているのかはわかりません。流石にあの可愛いイラストはデザイナーの方が描き起こしたものではないかと思うのですが。。。どっちなんだろう。

そして「真正眼点藻のなんとも言えない色合い」。「真正眼点藻」って何。ほら、あとがきとか最後から読むから全然わからない。このプランクトンハンドブック全部読めばどこかに書いているかもしれませんよ。これは著者からの挑戦ですよ。

え、めんどいですか。そう言われると思って超調べましたよ「真正眼点藻」!

真正眼点藻って何? まじで。

簡単に言うと「不当毛植物」の一群です。この言い方でもわかりませんよね。いいですか、ここからガチで付け焼き刃の知識を披露しますからちゃんと読んでくださいね。専門家ではないので間違っているかもしれませんがそれでも全力で解説しますからね。

まず、「生物分類学的階級」は「界」「門」「綱」「目」「科」「属」「種」の順に細かくなっていきます。例えば我々「ヒト」であれば【動物界、脊椎動物門、哺乳綱、サル目、ヒト科、ヒト属、ヒト種】です。

で、「真正眼点藻」というのは「綱」です。「原生生物界」→「不等毛植物門」→「真正眼点藻綱」です。

ただし、このプランクトンハンドブックでの分類は最近のDNAを用いた研究結果などから最新のものを紹介しているとのことで、一般的な図鑑とはかなり異なっているというのが「まえがき」に書いてあり、目次としては「細菌」と「真核生物」にわけられています。

ほらさっき中山先生の紹介文に「藻類などの原生生物の多様性について研究している。」って出てきましたよね。これ我々がなんとなくイメージする「げんせいせいぶつ」じゃなくて、おそらくですけれど「原生生物界」のことかもしれませんね。

さて、どうやら「真正眼点藻」というのは分類の名前で、「真正眼点藻綱」に属するプランクトンを中山博士は好きだとおっしゃっている。そしてこのプランクトンハンドブックのページをペラペラとめくっていくと、ページの左右に分類が書かれていてわかりやすくて、

p70-71「ストラメノパイル(不等毛類)」【不等毛植物門】■真正眼点藻綱

というのが見つかりました。これだ!

ここでは以下の2目4属が紹介されています。

<ユースティグマトス目プセウドカラキオプシス属>
<ゴニオクロリス目ゴクオクロリス属>
<ゴニオクロリス目プセウドスタウラスツルム属>
<ゴニオクロリス目トラキディスクス属>

これが中山博士のお気に入りです。

なんとも言えない黄緑色! かわいい!

実際にプランクトンハンドブックで見てみてくださいね。
ちなみに本の最後の方に掲載されている索引は「属」での検索のみとなっているので、「門」「綱」での検索は各ページの左右を見ながらパラパラめくってください。段々本書の使い方がわかってきたでしょう。

長くなってしまいましたが次は山口博士です。

山口 晴代(やまぐち・はるよ)

1983年、千葉県生まれ。博士(理学、筑波大学)。
国立環境研究所・生態系環境研究センター研究員。
現在は国立環境研究所微生物系統保存施設にて、たくさんの“プランクトン”に囲まれて研究活動を行っている。
好きなプランクトンは、プラシノ藻。

1983年生まれ?!

好きなプランクトンは、プラシノ藻?!

 

1983年生まれの私と同い年でした。同世代でこれだけ熱中できることがあって、実際に研究者として活躍されている方がいるというのは勇気をもらえます。

そして「好きなプランクトンは、プラシノ藻」。これも索引からは探せません。で、色々と調べてみた結果以下のことがわかりました。

プラシノ藻って何? まじで。

「プラシノ藻」は「緑藻植物門」に含まれる。本書では「緑色植物亜界(緑藻+陸上植物)」の分類にどうやらありそう。そしてプラシノ藻は「マエミラ目」「シュードスコウルフィエルディア目」「クロロデンドロン目」「ピラミモナス目」に分けられてきたのが伝統的な分類らしい。この4目の表記をプランクトンガイドブックで探していくと、

p30 「緑色植物亜界(緑藻+陸上植物)」■クロロデンドロン藻綱

というのが見つかりました。これだ!

紹介されていたのは以下。

<クロロデンドロン目テトラセルミス属>

これが山口博士の好きなプランクトンです。

丸くて毛がはえてる! かわいい!

これも是非本書で見てみてください。

著者紹介のまとめ

 

ほら、ガチだったでしょう?

 

まとめ:プランクトン好きの方もそうでない方も

こんな本です。『プランクトンハンドブック 淡水編』。全部読み込まないとわからないことがまだまだありそうですが、とても楽しい本なので是非。ちなみに最初の方にプランクトンの形からイラスト検索できるページがあって、このわかりやすいイラストは中山博士がお描きになったものだと思いますが非常によく考えられています。小学生とかでも大人でも、顕微鏡で見えたプランクトンの特徴から絞り込んでいけるということですよ。これも面白そう。そして実は各プランクトン紹介に「レア度」がついています。3段階の星で。もうこれはプランクトン界のポケモンGOです。おすすめ!

 

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