起業・フリーランス

自分自身やその技術を売るのか、仕組みやコンテンツそのものを売るのか。

自分自身やその技術を売るのか、仕組みやコンテンツそのものを売るのか。

独立起業して5年。この5年間は有り難いことに個人事業主・フリーランスとして継続的な収益を出し続けることができています。2018年度分の確定申告もそろそろですが着地としては上々。今のところは基本的に営業活動はしておらず紹介や何かしらの縁で仕事を頂いているものの、次の5年を考えた場合に今一度戦い方を整理しなければならないと考えていて。

企画業はクライアントのタイミングに左右され、自治体案件だと単年度で終わることも多い

企画業というのは1年を通すとどうしても受注と売上に波があります。「企画業の波」というのは、関わるクライアントにもよりますが求められるタイミングが自治体や企業の企画コンペのタイミングに左右されるということです。

企画書作成で最も集中するのが年度の切り替わりとなる2〜4月頃。これは新しい年度に向けたコンペがまとまって入るような形。尚、自治体事業だと4月頃に受託決定したとしても実際に動き出すのがGW後くらいのこともあります。

自治体事業だと年度の締めは翌2〜3月頃で、事業費の精算もこの時(成果報告書を出した後)にまとめて振り込まれることもあります。このため年間通して回せるキャッシュフローが無いと厳しい側面も出てきます。例えば500万円の事業を受託した場合、経費割合によって最大500万円(これだとトントンですが)のキャッシュがないと途中で資金が尽きてしまいます。

つまり無借金経営を前提とすると、事業用口座に入っている資金額によって受託できる事業サイズも変わってくるということです。また2〜3月にまとめて売上となるということは、それ以外の月が売上がその事業では入りませんから毎月の収支は赤字続きになることも。

これは年度事業を中心とした売上構成となる場合に限りますが、一人経営で個人事業主・フリーランスとして働く場合にはある程度大きい額の事業が年間1つ2つあれば十分という見方もできます。

但、年度事業中心で構成する場合にはあくまで「単年度」で案件が回っていきますので、翌年以降の約束事が何もありません。次のコンペに負ければゼロですし、そもそも同様の事業自体がなくなることもあります。実際にこの5年間でも近い形の事業に複数年関わったこともありますが、どちらかというと稀なケースです。

マネジメント契約的なものを結んでいる固定クライアントがいれば月に一定額の売上がたつことも考えられます。ただし大都市圏であればともかく、地方レベルではあまりこのタイプはメジャーではないかなと。

企画業よりは寧ろ印刷業の方が定期的な増刷発注があるかもしれませんね。その意味では印刷業は「クライアント毎の売上ベースを積み上げていくこと」が求められます。広告関係でも同様ですがこちらは一般企業でもコンペの色合いが強いかもしれません。

起業する際に決めなければならない「売上の積み上げ方」と「戦い方」

私の場合は主に企画業を中心としていることから、前述のように年度ごとにコンペで獲得していくという意味で「毎年リセットされる」戦い方を続けています。同じ自治体でも発注元の「課」が異なることもあります。

また直接受託するというよりは間に広告会社等が入って、そのチームの一員として手伝うということの方が独立当初は主でした。それがここ2年程は直接受注が中心となるように調整してきており、売上構成も年々大きく変化し続けています。これは自分の事業所が自立して戦っていくための足腰を強くしてきたということです。

起業する際には「売上の積み上げ方」と「戦い方」を強く意識する必要があります。

毎月固定で収入があるような戦い方にするのか、または1年のうち短期間でも大きく売上が上がるような戦い方にするのか。安定するのは前者ですが、短期間で年度ごとの売上を大きくしやすいのは後者という印象ですね。ただ1件毎の金額が大きくなりすぎない方がリスクヘッジできるので偏りすぎないようにするのが賢明ではあります。

同様に年々売上のベースが積み重なっていくような戦い方にするのか、または年度ごとにリセットするような戦い方にするのか。やはり中長期的に安定するのは前者ですが、短期間で売上を上げるならば後者という印象。起業したばかりであれば後者からスタートして短期間である程度キャッシュをためつつ前者に移行していくのが働き方としても無理がないかもしれません。

これらを経営者的な側面から考えると「技術を売るのか」「仕組みを売るのか」という見方にシフトすることもできます。

前者は「個人としての技術を売る」という意味合い。デザイナーだったりプランナーだったりライターだったり。個々人の名前を売るようなイメージでアーティスト・クリエイター寄りの考え方です。フリーランスとして働いている方はこちらが多いかもしれませんね。

後者は「利益を生む仕組みそのものを売る」という意味合い。システム開発だったり、小売商店だったり、メーカーだったり。個人名ではなく企業名で売れる「モノ」や「仕組み」を商品とする考え方です。組織として働いている方はこちらが多いのではないでしょうか。

ブログを始めとするメディアやYouTubeはどちらの側面もあって、芸能人的に個人の人となりやカリスマ性を売りにしている場合と、匿名で誰が運営していても構わずコンテンツ自体を売りにしている場合があります。

経営者として何かしらの商売を考えていくには、これらの中でどのポジションでどのように戦うかを整理して戦略を立てる必要があるということ。もちろんどちらか一方ではなく、組み合わせのバランスで考えるということも含めて。

まとめ

個人の技術をフリーランス的に売っていくことは身軽でやりやすい側面がある一方で、自分自身の稼働力を超えて広がらないという側面もあります。また将来的に事業を引き継ぐようなこともできません。これが仕組みやコンテンツを売っているのであれば売却や継承も可能となりますよね。

極論、個人を売っているなら自分がいなくなったらおしまいなわけです。アーティストと同じです。仕事として近いことができる代わりの人は出てくるかもしれませんが、個人事業としてはそこで終了。それで良しとするのか、または社会課題を解決するようなことも含めて継続性のある事業体を目指すのか。

結構な悩みどころではあるんですよね。シミュレーションをしていくと個人事業主としてのフットワークの軽さはやはりメリットも多くて、その自由度を保ったまま組織化したいができるかどうかとか。こうやって記事に書いていくことで少しずつ頭が整理されていくわけですが。これからフリーな働き方を目指す方は(詳細な計画書的なものまで立てなくても良いと個人的には思いますが)ある程度はイメージをして仕事作っていくことをおすすめします。ではまた。

 

ちなみに最近何かと話題の「しょぼい起業でいきていく(えらいてんちょう)Kindle版」もKindle版で読んでみましたけれど、この考え方は参考になりますね。最初から経費をかけないで生活と共用できるような小さな起業から始めてみると。ただ結構センスがいる手法でもありますから、これベストセラーになってみんな真似しようと思っても簡単にはいかないだろうなとも感じます。具体的な数字というよりも「考え方」の本でした。起業に迷っている方には背中を押してくれる本になるはずです。ご一読あれ。

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