今年も明日で仕事納め。個人事業主の事業年度は1〜12月なので、独立してから5年目が終わることになります。細かく言うと2014年5月に起業したので丸5年となるのはもう少し先ですけれど。最近ずっと考えていることがあるので文字にします。
ビジネスを考える場合、5年って大きな区切りです。
35歳、独立5年目でこれからの5年間について考えていたところ。「40歳までに、自分の活躍できる分野を見極めなさい。〜中略〜そして、その分野で第一人者を目指す。」というのは背中を押される思い。これまで手広くやってきたから、それら全部棚卸しして何を取捨選択してどこに集約するかだな。 https://t.co/NNrSc8aft4
— Neji (@neji1983) December 27, 2018
「5年」って一言で言うだけなら簡単で、あっという間と言えばその通りなのですが、個人的にはビジネスのサイクルとしては大きな区切りだと捉えています。起業3年目が壁だとかも言いますけれど、それは単純に「そもそもの事業がマネタイズできうるものだったのかどうか」の判断にすぎません。最初から無理のあることをしていれば3年持ちませんよねというだけの話。
大切なのは「5年」です。業界にもよると思いますけれど、個人事業主・フリーランスレベルのビジネスである程度安定している前提で話をすれば「5年経つと起業時に構築した理論が古くなっている」ことを意識しなければなりません。特に私の場合は企画業や広告業などが中心領域となりますので技術を含めた移行スピードがとても速い。5年もあれば、例えばSNSに限ったトレンドだって様変わりしますし、その最新の時代背景を鑑みた企画の論理建ては全く異なっていることになります。
元々広告会社にいたのでこのスピード感は肌で感じておりましたので、起業後の5年については更に次の5年に向けた準備期間として意識的に動いてきました。具体的にその一部を挙げれば以下のようなことについてです。
5年間で取り組み、積み重ね、準備してきたこと。
毎年テーマと領域を意識して実績を積み続けること。
全般的な話としては、毎年異なるテーマを自分に課してきました。それは領域であったり分野であったり地域であったり。あまり詳細はここでは述べませんが、企画技術をベースとしつつも「何を」「どこまで」できるのかについて自分自身でも把握する必要があったからです。起業支援もしましたし、デザインもある程度内製化できるようにしましたし、商品開発支援もしましたし、最近では講師案件も受けるようにしています。
これは独立前の地元での自分に対するイメージをアップデートしていく意図もあります。独立前から私のことを知っている方にとってはもしかしたら今でも「会社員としての」「会社内でのポジションでの」イメージのままかもしれません。この点について、独立起業しようと考えている方は注意してください。企業に所属していた時代のあなた自身のイメージに引きずられないようにしなければならないのです。それは5年前のイメージかもしれませんし、当時の役職のイメージかもしれません。でも独立した後は自分自身のポジションを決めるのは他ならぬ自分自身です。
5年前の自分と今の自分は技術もポジションも全く異なります。かつてのレッテルを貼り続けようとしてくる人も時にはいるでしょうけれど負けないようにしてくださいね。
基本的に相談された仕事は断らないこと。
これについては様々な意見があると思いますが、独立前のキャリアが10年あったとしても独立後は経営者として新人です。自分自身の事業を数十年スパンで育てていくことを考えるのであれば、最初の5年は可能性を探る期間に位置付けて何でも引き受けた方が良いです。その経験を持って後々取捨選択してチューニングしていくのです。
私の場合、ここまでの5年間は条件・金額に関わらず基本的には依頼頂いた案件は受けるようにしてきました。時には厳しい条件だったり、労力に合わない金額だったりすることもありましたけれど、その感覚も重要な経験です。当然ながら発注する側に立つこともありますからね。チームを組むスタッフを思いやれるかどうかに関わる部分でもあります。
また、様々な案件を受けることで将来的に組織化した場合にどこまで事業化できるかの判断材料を増やすことができます。労働に見合った料金設定もしやすくなるでしょう。これは従業員を雇った場合のワークライフバランスが取れた働き方の実現にもつながります。無茶苦茶な案件は受けない判断をするのも経営者の責任ですからね。
実際、5年経ってこのあたりの感覚についてはある程度固まりましたので、つい最近になりますが料金表のたたき台を作りました。しっかりとした基準を作ったのはこれが初めてです。金額以外の諸条件も判断材料になるので絶対的なものではありませんけれど、2019年以降はある程度これに基づいて案件を受けるかどうかの判断をしていきます。
将来的に「何のために働くのか」をしっかりと決めること。
これは当然と言えば当然なのですが、例えば企業勤めだとある一定数は「お金を稼ぐため」みたいな層がいます。仕事とプライベートを完全に割り切っている考え方ですね。これはこれでOKです。
一方で「好きなことを仕事にしている」とか「仕事こそ人生だ」みたいな人もいるかもしれません。これも自由です。
ただしこれは「労働者」として考える場合です。つまり自分が「経営者」となる場合には状況が全く異なります。フリーランスでも一緒ですよ。
一人親方であれば自分の人生をかけた自分の事業・会社になります。従業員を雇えばその従業員やその家族に対する責任も出てきます。もう少し引いて考えると地域や社会に対する価値をどのように提供していくのかということを考える必要があります。
横文字で「ミッション」「ビジョン」「バリュー」とか、そういう整理でもよいでしょう。でも結局は「何のために働くのか」というシンプルな問いに集約されます。「稼ぎたい」という場合は、その稼いだお金で何をしたいのでしょうか。自分が実現したい人生に必要な「稼ぎ」ってどのくらいなんでしょうか。具体化が必要です。
ずっとフリーランスでいるのか、法人成りするのか、そんな選択肢も含めて最初の5年間はこの答え・ポジショニングについて模索する期間です。
運営資金・資産を積み立てること。
独立起業だとか自営業始める際、よっぽどの確証がなければ最初に設備投資とかはしすぎない方が良い。できるだけ低コストで身の丈にあったことからスタートして、その報酬で機材アップグレードしていく。この繰り返し。そう考えると勇者にひのきのぼうを与えたドラクエの王様は起業家育成の資質がある。
— Neji (@neji1983) December 25, 2018
最初の起業時にはそれほど多くの資金を用意しなくても大丈夫です。というか経験的には可能な限りローコストで始めた方が良いと思います。身の丈に合った小さな仕事をして、その報酬で機材をグレードアップして、みたいな成長の仕方が理想です。
仕事道具は多少高くてもしっかりしたものを用意した方が良いのは確かですけれど、高価な機材を買って満足してしまうタイプの方もいるかもしれませんよね。個人事業主・フリーランスとしては可能な限り「無借金経営」を大前提にして事業を育てていく方が良いのではないかなと考えています。
また業種によってはどうしても設備投資が必要で借金スタートからという場合もあると思いますけれど、それなれば企業に勤めている間にその資金を貯めておくことですね。それか二段階の起業にして、最初は資金積立の為の起業、貯まったら設備投資が必要な第2起業みたいな。
私の場合、現状としては想定通りの資金積立ができていますので、次の5年間のために活用していきます。仮に法人成りするとなると資本金を入れる必要もありますからね。
5年間の経験と実績を、次の5年間のために集約する。
さてこれらの事柄について積み重ねてきた5年間のベースをもとに、世の中の状況も刻一刻と変わり続けている中で次の5年間について判断しなければなりません。
大まかには「広げてきたものを集約すること」です。そのまま広げ続けるのも選択肢の一つではありますけれど、何かを突破するためには一点に絞り込む必要があります。分散している力を束ねて圧縮して集中させるわけです。それは傍から見ればシンプルなものになるはずです。
私が企画やデザインに向き合う基本思想として起業時に決めた「simple, but powerful(シンプルに、強く)」というコンセプトはここにも繋がります。
この5年間、クライアントファーストで提供してきた価値。それをここで一旦自分自身に向けることになります。自分自身の事業体を自分自身で磨いてきたものによって全力でアップデートするということです。起業時から見据えてきたこのフェーズにやっと到着したんです。
まとめ
もしあなたが起業後の5年を生き延びたとしたら、仕事や経営は既に安定しはじめているはずです。人間関係、技術、ワークフロー、理論etc… 安定することは大切です。でももしそこからまた次のステージやフェーズに進みたいのであれば再整理が必要です。5年間で新たに染み付いたイメージやレッテル。それらをそのまま育てるのも選択肢の一つですし、向き合い戦うタイミングかもしれません。
独立5年目の35歳。来年2月には第1子が産まれる予定です。実は色々な区切りがここから半年で押し寄せてきます。選択と決断をしなければならないね。