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「もう一度あの景色を撮りたい」で呼び込むまちづくりの可能性。

写真目的の旅行に対するアプローチはまだ余地がある。

写真が趣味だとドライブとか旅行の楽しみも広がるものです。SNS向けの写真が好きな方も多いとは思いますが、自分の場合はどちらかというとSNSにはそれほど投稿するわけでもなく単純に自己満足的な楽しみとしてカメラ片手に歩くことが多いです。

まちづくりとか観光というものを考えたときに自分がどんな基準で行き先を決めているかなと振り返ってみると、この「写真」という視点でも一定の動機付けがあるなと感じています。まぁ少し使い古されてきた感もある「インスタ映え」的なものと根っこは同じなのかもしれませんが、いいねを沢山もらいたいというような欲求ではないレベルでの写真欲というものと観光誘致の組み合わせはまだ工夫の余地がありますね。

また来てみたいなという動機付けと写真の関係。

今年の春に岩手発で東北6県を車で回ったり、同じく岩手発で北陸福井まで車でドライブ旅行したりしました。明確な目的地だとかは決めきらずに直前に泊まれる場所を探しながら(無ければ車中泊で)、毎晩次の日の行程を決めながら動く3泊程度の旅です。宿泊が絡むと温泉宿で美味しいご飯を食べられそうなところを探したりもします。今回福井からの帰りには富山の魚津市に寄ったのですが、ここは蜃気楼の町。この時は残念ながら蜃気楼を見ることはできなかったものの、また次の機会に来てみたいなと思わせてくれる場所でした。

冒頭の写真は宮城県南三陸町。志津川湾の朝焼けです。東日本大震災前の写真なので湾内に多くの筏が見られます。朝日や夕日も四季との組み合わせで何度もその地を訪れたいという動機付けになりますよね。蜃気楼もそうですが人間が意図的に結果を左右できない自然というものはその時その時の1度きりのものです。桜などもそうで、毎年同じ場所で同じように咲くとはいっても実際は同じシチュエーションの写真を撮ることは殆どできません。

こういう写真歩きが楽しいと感じられる観光地と比較して、自分が住んでいる周辺の街なみにもし足りないものがあるとしたらなんだろうなぁと最近考えながら見渡してみています。市街地はスナップするのに困るわけではなかったり、川や城址などのフォトスポットと言われるものはあるのですが少し違う。それはそれで良いものの、もっと何かあった気がする。そう考えながら過ごしていると、一つの気付きがありました。

撮影欲求を満たしてくれる自然の表情の豊かさと撮影可能スポットの少なさのギャップ。

それは「被写体はあるのにそれを撮ることができる場所が意外と少ない」ということです。周辺を山に囲まれたまちに住んでいて、例えばこの季節ですと真っ黒な雨雲の下で偶然どこからか射した陽の光が紅葉に染まる山々を照らしていることがあります。絵画的でとても不思議な光景です。これを撮りたいと思ったときに、中々良いスポットがない。高台から撮るのが一番良いのだとは思うのですが、田舎町なのでそう簡単には見つからない。グラウンドレベルでイメージ通り撮影できる場所ってそれほどないもので、遠目には心動かされる景色が広がっているものの中々ベストポジションに移動することができなかったりするんですね。

東京などであればどこか商業ビルだとか、屋上開放されている場所だとか、何かしら自分の「視点の高さ」を変えられる場所があるように感じます。「夕日が綺麗だ!」となれば「近くの○○の上の階にのぼってみよう」みたいな選択肢がある。地方でも沿岸であればそもそもが視界がひらけていることが多いですから自然と撮影スポットが存在することになるんですね。当たり前のことではあるのだけれど、田舎ってフォトジェニックな瞬間がとても多い割に、それを撮影できるポイントが少なすぎる気がするのです。遠目に記録するか、記憶に残すしかありません。

だからこそ、カメラマンが自分だけの撮影スポットを隠し持っていたりもするわけですが、観光という視点からするともう少し訪問者に選択肢があっても良いのではないのかなと。その解決法についてどうすればよいのかは検討の余地があるとしても、単純にその場所を増やしていくだけでも街歩きの受け皿だったりドライブ旅行の目的地化だったりができていくのではないかなと感じます。場所さえあればあとはタイミングの問題で、その旅の中ではイメージしたものが撮れなくても「次こそは」という再訪の動機付けにつながりますよね。

最近というか少し前の流行りが地方の自治体事業に1〜2年遅れで予算化されて、自治体レベルの観光パンフレットなどでもインスタ映え的な要素がやっと織り込まれているような状況も見るところです。しかし読み込んでみると、大抵はこれまでと同じような情報に対して一部の写真を少し見栄え良くしてみるレベルに留まっているものも少なくありません。もっと地域地域のカメラマンに1年スパンで素材撮影してもらったりすればよいのにとも感じつつ、単年度のコンペで決めていく自治体スタイルだとどうしても限界があるのだろうなとも思います。このあたりは民間主導での観光PRの可能性を探るのもありですね。

まとめ

田舎って土地はあるのにそれが観光客に開放されているスポットとしては少なかったりするので(安全面での理由などもありますけれど)、意外と写真撮影の選択肢がないという現状がありそうです。有名観光地を点で移動することで観光地の商店街などまで観光客が周遊しないという課題意識を持っている自治体もあるでしょう。それって単純に情報を出すだけでは足りないんですね。観光客の立場になれば「魅力があるかどうか」「立ち寄る価値があるかどうか」が判断基準です。その場所で何ができるかをちゃんとプレゼンテーションしないと選ばれないわけです。この点、写真というのは比較的簡単で敷居低く呼び込めるもので、しかもインスタ映え的な(他人に作品として見せる)ものよりももっとカジュアルな受け皿として工夫する余地がありそうです。継続的な課題意識として解決のためのアイディアを探しつつどこかで試してみたいですね。皆さんには「もう一度あの景色を撮りたい」と感じる場所はありますか。それってどんな場所でしょうか。そこに答えがありそうです。

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