まちづくり

還暦祝いで母親に旅行をプレゼントしたら旅先であまり消費せずに節約して帰ってきたことと、地方経済の今後。

私の母親が今年還暦を迎えたので、夫婦で旅行しながら少し高級なホテルに泊まってきたらよいよと少し前に宿泊+α(お小遣い的な)をプレゼントしました。

今日はそのお土産&お土産話ついでに我が子の顔を見に来てくれたので色々と話を聞いたのですけれど、地方経済や観光的な視点で考えさせられたことをいくつか。詳しく検証しているものではないので雑記的なものです。

意外と旅先でお金を使わない高齢者層。

これは人にもよるので一般化して話すわけではないという前提で。

若い世代から見ると上の世代ほど可処分資金が潤沢にあると思いがちですよね。高度経済成長からバブル期にかけての時代も知っていて、働けば働いただけ稼げた時代を生きてきた層ですから。日本の現状としては高齢化が進むばかりなので、様々なマーケットにおけるターゲットもこの「お金を持っているはずのボリューム層」に合わせて上昇するばかりです。

また最近はTV番組も面白くなくて若い人世代ほどTVよりYouTubeやNetflixなどを観るとも言われていますが、これもある意味では視聴者層としてのボリュームゾーンが上昇しているからとも言いますよね。視聴率を取るには最もTVを視聴している層に合わせて制作するのが手っ取り早いですから。

しかもネット上で「TVがつまらない」と声を上げるのはどちらかというと高齢者よりも若い層でしょうから、何となく聞こえてくる声としてはTVに否定的な意見があるように見えても、実際の番組構成や視聴率とはズレがあるということにもなってきたりするんですよね。

必ずしもそうではない場合も勿論ありますが、人口構成が高齢者優位になるにつれてそれに合わせたターゲット設定が強く意識されるようになってきていることは間違いないと思います。

うちの親は夫婦で既にリタイアして年金暮らしをしているのですが(母親は少し前まで気分転換レベルで働いていましたけれど)、私世代(30代半ば)からしても給与が良かった時代の人たちだという印象があります。

しかしそれにも関わらずどちらかというと質素な生活を楽しむタイプでして、旅行などでも極力お金を使わないスタンスなんですよ。今回、母親の還暦祝いということでプレゼントした旅行についても「もったいないからキャンセルして」と最初ちょっと揉めたくらいで。

これって生き方としてはそういう価値観であっても良いだろうなとは思うものの、見方を変えると「ある程度の高齢者層って旅とかでお金を使わないんじゃないのか」という話になってくるということでもあります。

若い層からすれば裕福に見える上の世代(しかも単純に人口が多い)に溜め込まず消費してもらわないと経済が回らないと感じるのに、実はその世代の一定割合が消費しない価値観で生きているとすれば、特に高齢化率が高く富裕層が少ない地方の経済はどんどん冷え込むよなぁということ。

実際に地域の商店街などは寂れていくばかりと言いますが、メインの購買層であるはずの高齢者層は若者ほどには減っていないはずなんですよね。総人口が減少局面に移っているとは言えもう少し維持できても良さそうなものですが、ボリュームゾーンであるはずの年代が意外と消費していないということが原因のひとつなのかもしれません。

節約・節制の美徳意識と地方経済の衰退。

今回のお祝いの際には、宿泊にプラスαとして旅行中に使うようにとお小遣いを包んだのですけれど、結局夫婦でほとんど使わずに律儀に返してきました(受け取らずに何かのためにと持たせましたが)。

個人的には旅行先で消費すること自体が大切だと感じていて、しかも私達の親世代が消費しなくてどうするんだという気持ちだったりもします。

聞けば何かしら「高かったから我慢した」みたいなことも旅先ではあったようで(それも大した額ではないんですよ)。折角の還暦のお祝い旅行ですし、遠慮せずに使い切って少しでも多く思い出をつくって欲しかったんですけれどね。お金はお金のままで持っていても何にもならないので。

ただ話を聞く限りはうちの親の場合はもうそういう価値観になってしまっていて、しかも歳を取るごとにその「節約・節制が美徳である」という感覚が強くなっているようです。家計としては裕福ではないにせよ飢えるほどに困窮しているわけでもなく、そもそも年金もまだある程度はちゃんと貰えている世代ですから嫌々節約しているというわけでもないわけです。

我が家からのお祝いについても「子どものこともあるし家計大変なのに大丈夫?」という感覚らしいんですよね。そういうのもあって使い切らず返してきたということもあるのでしょうし。我が家も個人事業主の私がこの1年は自主的なほぼ育休生活をしているので十分な余裕があるというわけではないのですけれど、親に旅行をプレゼントするくらいは特に問題ないんですよ。そもそもそれ用に準備してきたものでもありますから。

だからこそ一歩引いて考えた時に「子どもからのお祝いで旅行する場合でも旅先で消費せずに節約するのを美徳だと思っている」ということが結構なショックでもありました。うちの親がイレギュラーな例であればまだ良いのですけれど、地元の商店街や観光地などを見ていると同じような世代で同じような感覚の人たちが一定数はいるようにも思えるんですよね。

ある意味で「いかに消費してもらって経済を回すのか」というのが私達の世代が取り組むべき地域課題でもあるわけですから、極々身近な例からその難しさを再認識させられたところです。

まとめ

地域経済の先行きはかなり厳しいものになっていくことは間違いありません。そもそも経済圏を支えられる人口に満たない地域が今後続々と出てきますからね。

現状では少しでも財布に余裕があって世代としての層が厚い高齢者層をターゲットにしつつ何とか切り抜けようとする動きが多いようにも感じられますが、実際はその層が節約・節制を価値として積極的に消費行動を抑えている可能性があるということを忘れてはならないなと感じます。

それに対してどのような仕掛け・デザインをしていくのかについてはまだ答えが見つかりませんが、自分自身の今後の事業としても何かしらのアプローチを試みる必要はありそうだなと思った親の旅行エピソードでした。ではまた。

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