仕事

田舎移住がなぜ単純な転職よりも起業や就農が注目されるのか

地方移住して就農したとある料理人の話

仕事でお世話になっている農家の方と話をしていたら、その方、実は昔関東で料理人をやっていたことを知りました。東北の地方に移住してきて、就農して現在は地域にどっぷりつかって活躍されています。農業するための土地自体は身内が持っていたようで、それを継いだという形のようです。

少し不思議に思って「どうして就農という選択をしたんですか?」と聞いてみました。関東で料理人をしていたのであれば、地方でも同じような道を選ぶことも考えられただろうなと感じたからです。

彼の答えはこのようなものでした。

「最初は農業について考えていなかったんだけれど、料理人として同じことをやっていてもこっちの給与があまりに向こうよりも安くてがっくりきてしまって。それならいっその事、土地はあるから農業やったほうがちゃんと稼げるかなと思ってね」

この答えって結構地方移住の際の課題を如実に表わしていると思います。特に首都圏などの賃金が比較的高い場所から、東北の片田舎に移住して来る場合には。

地方移住・田舎暮らしの課題は転職に伴う賃金低下

地方移住に伴う課題の中で、転職・仕事・賃金は第一。

地方移住についての課題は比較的はっきりしていて「仕事」「教育環境」「医療」「介護」「インフラ」「コミュニティ」などが上位に挙げられます。移住を受け入れようとする地方自治体では大凡このあたりを解決できますよとPRすることが多いんですね。または「賃金は安いけれど幸せに暮らしていける環境がありますよ」という感じ。

この中でも「仕事」については最も大きな問題になります。「稼げるのか」「家族が食べていけるのか」の保障がなければ暮らすこともできないのは当然ですし、そもそも首都圏での現在の仕事や暮らしとのトレードオフで移住するだけの何かがなければならないですよね。

その一方で、地方での就職の現実は自治体レベルで結構差があるものです。例えば同じ東北でも宮城と岩手では平均年収が100万も違うとはよく言われる話。同じ県内でも市町村レベルで見るとまた差が出てきます。自治体によってはメインの働き場所として「公務員」「観光関連」「農業」の3つが主だよねという話も聞こえてきます。これは実感としても単なるネタではなさそうだなと思ったりもしますよね。求人自体は売り手市場の現在ですが、様々な条件を考えると必ずしも移住者には魅力的に映らないということです。

そこで最初の話に戻りますが、この事例のポイントは2つあります。

賃金格差は移住者が持つノウハウ活用の機会損失を生む

まずは賃金基準。首都圏でバリバリ稼いでから地方移住しようとする方は、同じような仕事内容でも賃金が大幅に下がる現実に直面します。これは逆に言うと同じ仕事するなら首都圏行った方が稼げるという地方から首都圏への人口流出(社会減)の原因でもあるのですが。。

たまに「今の時代、リモートワークもできるから田舎でゆっくりしながら大きい都市の仕事をすることもできる」という論法もありますけれど、それって首都圏内でも同じことなんですよね。「どこでも働ける」という種類の働き方ができる方は、環境的に好条件の都市を選べるのです。

だからこそ、受け入れ側が何が移住先の決定打になるのかをよくよく考える必要があります。先進地のノウハウを持って地方にきた方の力を十分に活用できない可能性もあります。これは機会損失です。

就農・起業で成功する移住者がいるという事実の裏には

そして「同じことやっても賃金下がるなら、どうせなら就農・起業したほうがいい」と考える方も一定数います。地域としても新たな雇用、商品やサービス生まれる可能性がありますから歓迎しますよね。実際に各地で移住後に収納・起業して活躍されている方は少なからずいらっしゃいます。

この点、ちょっと考えると不思議に思うのですが、仮に移住してくる方が農業や新事業で成功するのであればその分野での開拓余地は十分にある・あったということで、それは地元に住む人達にとってもチャンスは同じなのではないでしょうか。「就農・起業」をバックアップする形で移住・定住をPRしているのであれば、同じだけ地元でも就農家・起業家を生み出せるはずじゃないだろうかということです。

当たり前のことなのかもしれませんが、就農・起業の意欲のようなものは地方にはまだ少なくて、その可能性を掘り起こせるのは外から見て何かに気付いた人材であることが多いのではないかと。だとするとちょっと悔しくないですか。地域地域にはまだまだ可能性があって、そこに根付いて暮らしてきた自分たちは発見できなかったということですから。ビジネスとしての展開余地はまだあるはずで、賃金格差を埋めていく可能性でもあるように思うのです。

まとめ

「同じことをやっていても首都圏と地方では稼げる額が違うから、どうせなら農業の方がちゃんと稼げる」って話、結構示唆に富んでいると感じました。

移住・定住の取り組みは簡単なものではなくて、それはこれから数十年に渡って加速度的に進む人口減少の前では余計に難しい問題になっていくはずです。日本全体で減り始めているわけですから、自治体間の横スライドでは解決し得ないからです。出生数の増加を目指す裏には働き方や医療・教育環境の整備も紐付いてきます。すると余計に地方であればあるほどシビアになってきますよね。これは地方住まいの実感ですが。

新たな働き方のもとにちゃんとマネタイズができて、賃金基準も首都圏に肩を並べられるような価値を生み出すことがこれからの地方には求められますし、地方で生きる私達の責務でもあります。

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