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ディレクションという立場における判断の重要さ
関わる人が多い仕事をしているとどうしても建設的な妥協が必要になることもある。その場その場で条件下の最良の判断をしなければならない。感覚的に何が一番正解に近いのかは段々とわかるようになるけれど、それでもいつも悩む。その繰り返しです。あとは現場で自分が何とかする。
— Neji@ふるさとで生きよう。 (@neji1983) October 4, 2018
どんな仕事にも「調整役」が必要
企画関係の仕事をしていると、案件によって様々な立場で関わっていくことになります。プランナー、ディレクター、プロデューサー、ファシリテーター、専門家、審査員、講師、等々。一つの仕事でも立ち位置によって役割は変わってきて、主催や運営に近いものから、ゲストとして呼ばれるものまで。
その中でも、仕事の川上に近いところで関わる場合に例えば全体の調整をしていくディレクションなんかは円滑に進めるのに結構コツがいるものです。業界・地域・企業によって役割と肩書の呼び方が微妙に違ったりするのですが、ここでは全体進行を企画段階から現場まで取りまとめる立場として「ディレクター」とします。
ディレクターをしていて大変なのは「関わる人が多ければ多いほど全体調整が複雑になっていく」ということです。一つの仕事に関わるのが一つの企業、一人の担当のみということはまずありません。大抵は企業・団体など少なくとも2者以上、協力機関まで含めると10者以上ということも珍しくありません。更に各担当者レベルまで数えると人数では20-30人以上になることもあります。
「着地点」にどう持っていくのかが役割
そしてどんな仕事でも最終的に「着地点」を求めなければなりません。できる限り多くの方々が「良かった」と言える結末のことです。これがなかなか難しい。10人いれば10通りの考え方や価値基準があるからです。どれかを採用するとどれかを否定しかねない状況が生まれてきます。それも頻繁に。
ディレクターという「判断力」が求められる仕事
ディレクターの役割は、この数十人が関わる一つの仕事に対して、一つ一つの課題への解決を導いて、判断し、うまく着地させることです。そして最も重要なのがこの「判断」です。関わっている誰もが100%の正解を持っていないことを自覚しながらも意見をぶつけてきますし(これはそういう役割でもあるから当然ですが)、皆が皆迷いながら進んでいくこともあります。その中で、「右に行くのか、左に行くのか」「白なのか、黒なのか」を誰かが判断しなければならない。それがディレクターの役割です。
企業や体制によってはそれが営業だったり、AE(アカウントエグゼクティブ)だったり、EP(エグゼクティブプロデューサー)だったりもしますが同じことです。
仕事は全てが全て、全員の思い通りにはいかないもの
100%の正解はめったにない中で何かを決めるということ
やっかいなのは「100%の答えはめったにない」ということです。一定の基準・実施マニュアルの中で、「どうしても物理的に難しい」という関係者が出てくることもあります。そのときにどのような判断をして舵を切るのかが問われます。
基本的にはマイナスの方向にはしません。例えば「10できないなら8はできるか」を確認して、それが可能であれば実施基準や表現・説明を組み替えて「8の理由とストーリー」を作ります。これは「ごまかす」ということではありません。最良の結果を求めるための判断として説明がつく捉え方に見方を変換するということです。
少々抽象的かもしれませんが、これがイベントだろうが商品開発だろうが企画提案だろうが同じことですので軸になる考え方のイメージです。基本を捉えていれば何にでも応用が効きますので。
本質はブレさせないで建設的妥協の判断をする
何かしらの判断をする際に、本質だけはブレないようにすることが大切です。幹さえしっかりしていれば、枝葉が多少揺れても全体が倒れることはありません。
逆に言うと、幹を傷つけてしまうと簡単に全体が「瓦解」します。たくさんの大人たちが関わっているはずでも、一人ひとりを尊重しないと「瓦解」のタイミングはすぐにやってきます。往々にして頭を下げる最後のチャンスはこのタイミングです。
基本的にはそうならないように慎重に一つ一つの判断をしながら進めていくわけですが、ここに建設的妥協が必要になってきます。「妥協」という言葉だと語弊がありますが敢えて使いつつ、意味合いとしては「やらないという判断をする」「求めている100%出ないことを認める」「他の視点に切り替える」「妥協することによって全体をさらに良い着地点へ導く」といったことです。
関係者の誰かの意向を踏まえ、そのことで優先順位を下げられる誰かの意向についても配慮しつつ、全体として最大限の結果を求めていくこと。これが調整役、判断役としてのディレクターの役割です。
まとめ
長年この役割を続けていても、なかなか「最初から最後まで完全にイメージしたような仕事ができた」ということはめったにないものです。必ずどこかでぶつかって、調整して、建設的妥協が必要になって、でも結果としてなんとか着地させられた。そんなことが多いわけです。
でもこれは決して悲観的なことではなくて、その過程で新しいアイディアが生まれたり、それまで自分にはなかった視点を発見したり、学びもたくさんあります。それらは自分の好きなようにだけやっていたのでは生まれなかったものです。
また、経験を重ねることで判断力やそのスピードは上がっていきます。なんとなく「あ、この条件ではこれが正解だな」というものがわかってくるのです。次のアイディアが見えることも増えてきます。でも、それでもやっぱり毎回悩むもので。その繰り返しなんですよね。
あとは着地点となる現場本番や最終局面で、自分がなんとかする。その覚悟だけ。