まちづくり

田舎のお墓から市営墓地(公営墓地)への改葬から考える、地縁とお盆のお墓参りのこれから。

今日はお盆の墓参り。少し前に母方のお墓が隣町から自宅がある市の市営墓地に改葬されまして、お墓がある区画脇の駐車場まで車で直行できたので非常に楽だった反面、どこか去年までのお墓参りとは違う印象になったなぁとも感じてしまいます。

田舎のお墓から市営墓地への改葬の結果。

親戚もかなり高齢化していることもあって、田舎の山の斜面に作られた急勾配のお墓よりは安全にお参りできるというのはメリットがあるのかなと。

ただその一方で、駐車場からお墓までが近いとは言えだだっ広い敷地にお墓が並んでいる形になりますから、日陰になるような場所が基本的に無いんですよね。ちょっとした東屋的なものは所々にあるのですけれど。

車から降りてお墓に行ってお参りするだけで大した時間はかかっていなかったのですが、それでもこの猛暑ですぐに頭がクラクラしてきました。普段はエアコン効いた室内にいることが多いですし、移動の車中も同様に涼しくしていますから温度差でやられてしまったのかもしれません。久しぶりに目眩を感じるくらい。

田舎の墓地だと駐車スペースから少し歩いたり山を登ることがあったりして、その途中は木陰になっていたりするんですよね。そもそも気温が町中よりは低めだったりもしますし。その分、アブとかが多いというデメリットはありますが。

地縁と紐付いた「墓参り」からの分断。

改めて今日お墓参りをしてみて感じたのが、地縁のある先祖代々のお墓から市営墓地などに改葬すると、お墓参り自体がどうしても形式的なものになってしまうこと。もちろんそもそもの「お墓参り」というもの自体が一つの「形式」ではありますが、これまでの山の中のお墓に行っていた時とは感覚が少し違ってくるものだなということです。

田舎のお墓参りに行くと、その環境に帰って少しの時間でも過ごすこと自体が包括的な儀式というか経験になっているんですよね。更に墓所で会う人たちも祖父母世代や親世代にとっては同級生だったり当時のご近所さんだったりで、すれ違う度に声を掛け合うということもあったりして。

故人を偲ぶということが大前提ではあっても、もう少し広い意味で「その土地に生きる・生きてきた人たちが自分たちのルーツまで含めて意識し再開する場所」というのが田舎のお墓であったり墓参りという儀式であったりするのかなと。

それが利便性の良い近所の市営墓地に改葬すると、地縁や一族としての土地との関わりみたいなものが分断されてしまうというか。

同じ区画にある数々のお墓も基本的には見知らぬ家のお墓ですから、番号で区切られた自分の家の墓を目指して集まって掃除して手を合わせて帰るという「我が家のお墓参り」のみにスポットが当たるわけです。

田舎のお墓参り特有の「この土地のいくつかの一族が代々守り暮らしてきた」というような、ささやかな神聖さを感じる瞬間というものはもうほとんど感じられないんですよね。

たとえば3.11の震災後、数年経って仮設住宅から新しく造成された住宅地に集団移転する際に「コミュニティが分断される」という課題が顕在化しましたが、感覚としてはこれに近いものがあるというか。

確かに便利で安全で環境も良くなり管理もしやすくなったのですけれど「面」から「点」になったような感覚と言えばよいでしょうか。墓石自体はそのまま移設したので変わらないですし、集まる親戚も同じメンバーではあるものの、「点」になったことで「形式としてのお墓参り」というものが強調されたように感じました。

地方が衰退するとともに墓地も集約されていくのだろうな。

この時代、先祖代々のお墓から市営墓地に改葬すること自体はさほど珍しくはないものらしく、「利便性」が重視された結果というのが主な理由であることが多いようです。

親戚周りでも高齢化が進んで、子どもは減り続けていて。さて、墓守をどうするのかと悩んだ結果として「車(バス)で近くまで行ける」「坂が少なくて足腰悪くても危険ではない(バリアフリー)」「管理料が安い」というメリットから市営墓地(公営墓地)に改葬したり新たにお墓を建てるということですね。

日本の全人口が減少局面に移った今、(限界集落的な田舎では特にそうかもしれませんけれど)ある程度人口がまとまっている自治体の公営墓地に改葬していく流れは強まるのでしょう。墓守の役割を果たしていく人が一族の中で減っていくことへの対処法として。

自然と無縁仏状態になってしまったり、結局管理されずに廃れていってしまうよりは「安全で行きやすいお墓」というものが確かに求められていくのだろうなと。

ただ昔ながらの地縁と紐付いた墓参りというものが少しずつ減っていってしまうのかなと考えると寂しい気もします。単なるノスタルジーかもしれませんが。

まとめ

「一族の歴史」的なものを辿ればその土地に1000年とか遡ることができたりするわけです。ただ「お墓」そのものについては先祖代々と言っても日本の一般家庭のお墓事情って高度経済成長期以降にやっと誰でも建てられるくらいに普及してきたとか、戦後間もない頃はまだ土葬が半数だったとも聞きますよね。意外とここ数十年〜百年以内のものが多いのかもしれません。

今日行ってきた市営墓地も改葬したお墓よりも新たに建てられたお墓の方が多いようにも感じます。そういう意味では「お墓や墓参りの理想形」というのもまだまだ不確定だったりして、これから数十年で大きく変化しても不思議ではないのかな。先祖代々というよりも夫婦だけで入るお墓というのもどんどん増えていくのかもしれませんね。または両家まとめて1ヶ所にしてしまうとか。

改葬後に初めて親戚一同集まってお墓参りをして色々と考えされられたお盆でした。ではまた。

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