働き方

個人と企業における企画力とアイディアと会議と。

企画業をやっていると、様々なプロダクトだとかイベントだとかを見るたびに「これは凄いなぁ」とか「なるほどそう考えるのか」とか「これ広告代理店っぽいなぁ(笑)」とか良く考えるようになります。

買い物していても飲食店に行っても、表現やコピーやUIやオペレーションを見て製作者がどんな思考回路でここにたどり着いたのかを分析するのが楽しくなるんですね。

世の中の全てには「それを考えた人」がいる。

たとえば社会人になって結婚してちゃんと稼ぐようになると、学生時代に行っていたようなファストフード店だとかファミレスだとかには一時的に(家族が増えるまでとか)あまり行かなくなる人も周りには多い気がするのですが、個人的には「ビジネスとしてのアイディアを見たい」という点から個人店だろうがファミレスだろうが特に気にせず楽しみます。

世の中の仕組みやサービスがどのように設計されているのかって結構主観的にならないと気付かないものですよね。私も妻が妊娠して視点が変わりつつありますし、子どもが産まれればまたさらに視点が変わるのだと思います。

アイディアの「理解力」と「企画力」は近いけれど別もの。

仕掛けられた何かに気付くと「よくこれ思いついたな!」って感心させられることも多いのですが、アイディアの出し方とかまとめ方ってコツがあるものです。

方法論は業界や企業風土によって多少のクセがあるものなので一律ではありませんが、一度コツを掴むと本質をすくい上げるスピードが格段に早くなります。

特に「広告代理店っぽいな」という企画は思考の方向性に一定の「色」があるので、例えばコンセプトやタイトルを見ればどのような理論建てで考えられたのかがわかるようになるものです。

イメージとしてはソムリエ的な感覚かもしれないですね。

一口で「あぁこれはあれがベースになって、この考え方と視点を組み合わせた結果、このネーミングになっているんだな」ということが仮説的にですが思い浮かぶんですね。

ただこれは「わかる」というだけ。

ソムリエがワインを醸造できるかといえばそうではないのと同じで、企画の理解力と自分が企画立案できるかどうかは必ずしも同じスキルではありません。ワインよりは近いですが。

個人の企画力は本だけでは中々身につかないもので。

さて、ではアイディアを出す方のスキルってどうすればよいのかという話になります。基本的には業界内で誰かに師事するのが一番。

それ系の本は書店に山程並んでいますけれど、100冊読んだところで必ずしも企画力は身につきません。何でもそうですが、実際の案件を通して実践的に学ぶのが大切です。

特にビジネスとして通用する力を身につけたいのであれば「自分ひとりではなくプロジェクトチームやクライアントがいる場で学ぶ」ということが重要。ときに厳しいことを言われるかもしれませんし、悔しい思いをすることもあるでしょう。でもそういう場に自分を投じることが成長のきっかけになります。

また、あれこれ様々な方法論に手を出すよりは、1つの方法論に短期的にでも集中して自分のものにするのが手っ取り早いです。100種類の方法論を学ぶよりは、一人の先輩プランナーを(良い部分も悪い部分も含めて)徹底的にトレースする方が良い。

短期間というのは、社会人としての経験と企画周辺の経験が数年あるとすれば、少なくとも1年くらい。全くの新人であれば3年くらい。人によって吸収率は異なりますのでもっと早く身に付けることも可能ではあります。

その上で、自分なりにチューニングしていくんですね。誰かを師事すると、最初は相手の凄い部分ばかりが目に入ってきますが、ある程度自分も力がついてくると「良くない面」にも気づき始めます。それは成長です。時に「反抗期か」ってくらい反発したくなる場面もあるかもしれません。それをぐっと堪えて、良い部分だけを吸収しつくす気概を持って望むのです。

吸収前に反抗心だけで離れるのは時期尚早。感情的なものに流されず、対外的にも一定の評価を自分自身で得られるまでぐっと堪えます。どこかのタイミングで「(誰々の部下ではない)自分自身のポジション」ができていることに気付くはずです。ここまできたら独立です。

一般企業における企画とアイディアと会議

「企画」というのはどんな企業でも紐付いてくる側面がありますから、必ずしもクリエイティブな業種でなくても企画力を育てるメリットはあります。

たとえば勤めている会社の課内レベルでその力を伸ばしたい場合には、アイディア出し会議の雰囲気・ルールを変える必要があるかもしれません。

よくあるのが「声の大きい上司 × 同意し続ける部下たち」の構図。若手が何か意見を言っても上司は一蹴するような場面って経験ないでしょうか。

もちろん経験豊富なベテラン上司の方が判断力も論理建ても優れているかもしれません。若手も若手でしょっちゅう否定されてばかりいると「なんとなく上司が好みそうなことをそれっぽく言う」癖がつきます。その会議の時間を凌ぐだけの方法論ですね。

しかし「アイディア出し」ということに限って言えばこれは悪手です。

ここだけ聞くと前述の「先輩プランナーに師事する話」でも「声の大きい先輩に同意し続けるようなことがあるのでは?」と感じるかもしれませんが、ありません。企画・アイディアについての経験があればあるほど、企画会議では年齢も肩書も関係なく「横並びでアイディアを出し切る」ことの大切さをわかっているからです。

最後の取りまとめだったり取捨選択だったりはディレクション・プロデュースする立場で「船長判断」が必要となりますが、一つの課題解決に向かう最初のアイディア出しの場面ではクルーは「平等」なんです。できるだけ多くの異なる視点が必要なので、若手には若手にしか気付かないアイディアがあるということ。

社内会議で企画アイディア出しをする場合のルールは「肩書も年齢も関係なく平等な発言権」「どんなアイディアも否定しない」ことです。これが組織としての企画力を育てる最初の一歩となります。

まとめ

「企画力」とか「アイディア」って言葉で言うのは簡単でも掴みどころが無くて、それにも関わらずどこか魅力を感じる不思議な領域ですよね。長い進化の中で生み出されてきた我々「ヒト」ならではの領域だからかもしれません。だからこそ実はまだまだ未熟で若い機能なのかもしれず、ある程度は後天的にも学ばないと使いこなし方が身に付かないということなのかもしれません。

いつか瞬きするくらいの本能的なものになれば苦労しないんですけれど。

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