GR

苔むす庭に こもれびの

キノコの森林の秘密

以前にキノコの原木栽培をしている山を見学したときのこと。

鬱蒼とした森ではなく背の高い木に囲まれた林のような空間で、案内してくれた方いわく「計算された木の剪定で地面に届く光量を調整して、キノコに最も良い環境を作っている」らしい。驚きだ。

人がいても心地よい空気と湿度と木漏れ日のバランスのように感じたが、地面に広がる植物たちも心なしか気持ちよさそうに葉を揺らしている。

まぁこれは気分的なものかもしれないけれど、少し心当たりがあることがあった。

庭の苔の小さな世界

自宅の庭の土の部分に少しずつ苔を増やそうと思い、数年かけて雑草だけ抜きながら苔のコロニーが増えたり一部絶えたりするのを見守っている。なんとも地道で地味な趣味の一つなのだが、苔マットを買ってきて一気に敷くのでは侘び寂びもない。

苔と一言でいっても種類は多様で、またそこには様々な植物が日々共生するように増えていく。小さなアリが何かオレンジ色のタネを運んでいたり、苔の間に咲いた小さな紫色の花にこれまた小さな蝶が引き寄せられてきたりと、虫眼鏡の中の世界は多様で面白いものだ。

できれば苔だけにしたいので大きくなってしまった雑草から抜いていくのだが、それまで土だったところに苔が増えていくにはいくつかの法則性があることがわかった。

苔コロニーの栄枯盛衰から見えてくる法則性

完全に土だけの場所には苔の胞子が均一に飛んで着地するのか、小さな苔の芽のようなものが点々と現れ始める。その後、うまく育ったいくつかの芽の集まりが小さなコロニーとなって、島のようになって、全体として少しずつ増えていく。ただこの場合は苔の芽の生存率が低い。

一方で、ある程度広がっている苔のコロニーの端が少しずつ広がっていくのはわかりやすい増え方だ。この場合、溶岩が進んでいくようにゆっくりと広がっていくのかと思いきや、意外とそうではないようにも見える。コロニーの端から少し離れたところに苔の芽が出始めて、少しずつ大きくなり最後に合体するように見えることがあるのだ。いずれ苔は胞子で増えるわけだから理屈としては理解はできそうだ。

そして、これらの増え方にはポイントがある。

雑草の陰で苔の芽は成長する。ということだ。

例えばクローバーが広がっているその影にコロニーができ始める。でき始めでクローバーの株を引き抜いてしまうと、コロニーが絶えてしまうこともある。なぜだろうか。

おそらく一つは「保水」の問題。そしてもう一つは「適度な日陰」。つまりキノコの林と同じ条件を雑草たちが担っているのではないだろうか。

苔と共生と教育と秘密の庭

「雑草」という草はないというのはここでは置いておくとして、いずれ苔たちにとっては適度な日陰と風通しと水分・湿度を提供してくれる他の植物たちと共生することによって成長していくのだと思う。

もしかしたら苔庭業界などでは当然の話なのかもしれないが。振り返って最初の写真は旅行中にGR片手にふと目にとまって撮影した、苔蒸す庭に落ちる木漏れ日の陰。もしかしてここの庭師は木漏れ日も計算して木々の剪定をしているのではと考えると楽しくなってくる。

さて、もう一歩これを深めてみれば「人も同じなのではないかな」と庭作業をしながら考える。人を成長させるもの、教育環境、そのあるべき姿と環境はこのコロニーの成長と同じようなものなのではないだろうか。純粋培養ではなく多様性の中の共生。庭先の小さな世界にその秘密が隠されているのかもしれない。

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