被写体としての波は飽きないもので。
カメラ片手に旅行すると、山育ちの自分はどうしても海や湖に惹かれて足を運んでしまいます。瞬間瞬間がもう二度と現れない波の表情は、その音やリズムと相まって安らぎを与えてくれるものです。ここ十数年のアーカイブをたまに振り返りながら楽しんだりもするのですが、波を撮った写真はその時の機材に関わらず思い出深いものです。
冒頭の写真はEXIFによると2006年9月5日17:44:17に秋田県の田沢湖で撮影した1枚。16:9にトリミングしてLuminarとPhotoshop(Nik)で強めにレタッチしたもの。カメラはPanasonicのFZ50です。ノイズ感出してパープルフリンジが強調されちゃってますがまぁご愛嬌ということで。ちなみに田沢湖って今で言う所の「フォトジェニック」な場所で、天候や季節によって表情がどんどん変わる楽しいスポットです。岩手からもアクセスが良いので大学の頃はよくドライブがてら写真旅行に行っていました。
FZ50というカメラが教えてくれた写真の楽しさ。
PanasonicのFZ50は1/1.8型の総画素数1037万画素CCDセンサーを搭載した光学12倍ズームのデジカメです。当時はネオ一眼なんて言われたジャンルのカメラですね。今ではNikonのCOOLPIX P1000みたいに光学125倍(!)みたいな超望遠カメラもありますが、当時は12倍でもかなり画期的だったんですよ(ここでは焦点距離とか細かい説明は置いておきます)。しかもズームしてもレンズが繰り出さないもので、軽いし手ぶれ補正もついているしとても良いカメラでした。今から見るとスペックは当然低いですが、CCDのあたたかみも持っているので状態良い個体があれば今でも欲しいくらい。
さらにFZ50はチルト液晶でローアングルやハイアングルの撮影も楽だったので、グラウンドレベルでカメラ構えて波を撮るのが楽しかったわけで。特にこのカメラで学んだ写真の楽しさとして「目には捉えきれないディテール」を切り取るということ。フルマニュアルでの撮影もできるので、自分のイメージに合わせながらいかに瞬間を残すかという面白さに目覚めて波とか水しぶきとか水辺ばかり撮っていた時期もあります。
瞬間を切り取ることで見えるディテールの面白さ。
自分の眼で追えるスピードより速く動く・動き続ける世界を止めることで初めてわかることってとても多いんですよね。葛飾北斎の『富嶽三十六景』「神奈川沖浪裏」の話も有名かもしれませんが、あの波のディテールって実はシャッタースピード上げて波を撮ると見えてくる表情を実によく表していると言われます。北斎にはそれが「見えていた」と。
普段当たり前に見ているものほどこの「実は」というギャップは印象深いもので、また知的興味の面からしても単純に面白いものです。構図や人の表情という作品作りの一方で、どこか図鑑的というか説明的な発見を切り取る作品作りも写真の魅力なんですね。最近はズームレンズより単焦点の方が好きなサイクルのですが、FZ50で撮った写真をみるとこの楽しさがまた蘇ってくるようです。
ちなみにFZ50は手元にありますがジャンクと化しておりまして、今はFZ1000がその役割を担っています。と言いながら不思議とFZ50の時の方がガンガン写真撮っていたなという気もするのですが。あとFZ1000の後継となるFZH1という機種が一応最新にはなるのですがどんどん高価格化してまして、コストパフォーマンスを考えると個人的には今でもFZ1000の方がおすすめです。
まとめ
振り返ってみてもFZ50は良いカメラでした。マニュアルズームにマニュアルモード操作で色々試しながら遊んでいたのもデジタルカメラだとFZ50以降ですね。フィルムカメラだと小学校の時に親から借りたOM-1が最初ですけれど。オートで撮る気軽さもありますが、失敗しても構わないからマニュアルで色々試してみるのがカメラ好きの原体験としてはどこかで必要なものです。
とここまで記事書きながら思い出したのですが、自分で買ったコンパクトデジカメを手にするようになった最初の頃、どうしても物足りなかったのが「マニュアル操作感」でした。これはFZ50を手にしてからもまだ残っていて、その大元にあるのが「OM-1」の原体験です。初めて触ったのは小学校の頃。ダイアル操作とファインダー越しに揺れる針。フィルムの巻き上げとシャッター音。このアナログだけれどカメラが息をしている感覚ってとても好きでした。明らかに音と感覚で「全てが変わる」ことがわかるんですものね。
しばらくあの感触を求めて色々と探していたこともあったなぁ。今やデジカメが当たり前の時代になってすっかり忘れていました。改めてあのフィーリングに近いデジカメ探してみようかな。無理そうだったら状態良いOM-1個体も探してみよう。まとめついでに寄り道してしまいましたがオールドから最新まで同じタイミングで写真楽しめるって良い時代ですね。ではでは。